ブルークローバー・キャンペーン前立腺がん早期発見のためにPSA検診への理解を【7】
いまだ差がある日米間の認識PSA検診の理解と積極受診を
内藤
わが国の大きな課題は、50歳以上の男性のPSA検診受診率がわずか10%程度と低いため、すぐに治療が必要ながんが、日本においてはかなり見逃されている(過少診断)のではないかということです。
伊藤
一方、前立腺がんが社会問題化した米国では、1980年代後半からPSA検診が普及し、現在では50歳以上の米国民男性の75%が受診しているといわれています。それに伴い、1992年以降、米国での前立腺がん死亡率は減少傾向に転じました。2006年は1990年と比較して39%減少するなど、PSA検診普及の成果が表れています。アメリカの学会に出席した際のタクシー内で、ドライバーに「私は泌尿器科医です」と明かすと、「私のPSA値は○○ng/mlです」と教えてくれたことがありました。アメリカでのPSA検診の普及ぶりをよく表したエピソードです。
内藤
それに対して、日本は1万人以上の前立腺がん死亡者を数え、その数は増え続けています。アメリカとまったく逆の傾向にあるのです。日米間で治療レベルに差があるとは思えません。両国間のPSA検診の認識の差が、死亡数に関する傾向の違いの要因であることは間違いないでしょう。また日本では、泌尿器科=「かかりにくい」というイメージが強いと実感します。普及のうえでは泌尿器科への正しい認識も必要です。それと同時に、患者さんにとって身近な存在であるかかりつけ医の先生方にも、「50歳を過ぎたらPSA検診」という認識を広げていく努力をしていかなければいけません。
伊藤
特に、50歳を過ぎた男性には、父の日をきっかけに、PSA検診についての理解を深めてもらえるとうれしいですね。どのようながん検診にもデメリットはありますが、それ以上にメリットの大きいのがPSA検診です。PSA値を知ることの大事さ、知らないことの怖さを理解して、積極的に受けていただくといいですね。
内藤
PSA検診は採血検査で、簡単なものですが、そこから得られる情報は、必ず役立ちます。メリットとデメリットを十分ご理解いただいたうえで、受けていただきたいですね。