伝えたいこと低リスク前立腺がんの治療法別成績
低リスク前立腺がんの治療成績とは
低リスクの前立腺がんでは、手術、小線源治療、外部照射のどの治療方法を選択しても比較的高い治癒率が得られることが知られています。
しかしながら最近の多くのデータ解析から、たとえ低リスクであっても長期にみると再発率に差があることがわかってきています。
下のグラフは米国のグリム博士らが、欧米の主要施設のデータを治療後の年数にしたがって手術(前立腺全摘出術)、外部照射、小線源療法(ブラキ治療)等の低リスク前立腺がんに対する治療成績(PSA非再発率)をまとめたものです。
参照:「前立腺がんの治療について」
Grimm, P, et al., BJUI, vol .109 (s) pg. 22-29, Feb2012 欧米主要施設での治療別データより一部改変
<グラフの見方>
- 点の横に記載されている数字が引用されている文献の番号です。70近くの文献報告例を「治療成績」でグラフ中に割りつけています。
- 当該施設のある治療法の成績を下記のように表現しています。
X軸は、治療後の経過年数です。
Y軸は、その時点でのPSA非再発率です。 - 楕円の範囲は、治療法別におよその成績を示しています。治療後経過年数と楕円の中心と交わる点のPSA非再発率を見ます。
- PSA非再発率は、PSAが再発しない割合です。
低リスク:治療後8年の時点で各治療法の再発率
(1)小線源療法(ブラキ治療)単独療法で7%(PSA非再発率93%)
(2)手術(前立腺全摘出術)で15%(PSA非再発率85%)
(3)外部照射で20%(PSA非再発率80%)
となっています。
低リスクの前立腺がん治療法別成績についてのまとめ
各々の治療でPSA非再発の定義が違いますし、ランダム化比較試験の結果ではないためこれらの数字を単純に比較することは難しい面があるのも事実ですが、このグラフから言えることは、小線源療法は、PSA非再発率が高く治療成績が優れていることがよみとれます。
また、手術(前立腺全摘出術)をした場合、高い確率で癌が治ると一般的に考えられている低リスク前立腺がんでも、15%程度再発する可能性があるということがわかります。
<執筆>あじろぎ会 宇治病院 泌尿器科 岡本圭生先生