前立腺がんの治療法ガイド
手術・放射線・小線源療法の特徴と選択時のポイント

1.前立腺がんでは、どのような症状がみられるのか

前立腺がんは、がんの広がりや転移の有無などに応じて、病期(ステージ)1〜4に分類されます(図1)。早期の前立腺がんは、多くの場合、自覚症状がありません。進行すると、尿が出にくい、排尿の回数が増える、血尿がみられるなどの症状が出ることがあります。さらに進行して骨などに転移すると、腰や背中の痛み、足のしびれなどがみられることがあります。

図1:前立腺がんのステージ分類*1

ステージ 状態
ステージ1 がんが前立腺内にとどまっている早期の状態
ステージ2 がんは前立腺内にとどまっているものの、ステージ1よりも確認しやすい、または範囲が広い状態
ステージ3 がんが前立腺の外側や周囲の組織へ広がっている状態
ステージ4 がんがリンパ節や骨など、離れた部位へ転移している状態

*一般に、ステージ1・2は限局性前立腺がん、ステージ3は局所進行性前立腺がん、ステージ4は進行・転移性前立腺がんとして説明されることがあります。

【参考/出典】
*1 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん」

2.前立腺がんは、どのように診断されるのか

前立腺がんの診断では、まずPSA検査などにより前立腺がんの可能性を調べます。がんが疑われる場合には、MRI検査や直腸診、超音波検査などの精密検査を行い、必要に応じて前立腺生検で組織を採取して、がんの有無を確認します。前立腺がんと診断された後は、がんの広がりや転移の有無を調べて病期(ステージ)を判定し、治療方針を決定します(図2)。

図2:前立腺がんの診断から治療方針決定までの流れ*2

前立腺がんの診断の流れ

【参考/出典】
*2 前立腺癌診療ガイドライン2023年版


スクリーニング

・PSA検査
採血によって、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の値を測定します。PSA値が高いほど前立腺がんが見つかる可能性は高くなりますが、前立腺肥大症や前立腺炎などでも上昇することがあるため、PSA検査だけで前立腺がんと診断することはできません。そのため、必要に応じて精密検査を行います。

精密検査

・直腸診
医師が直腸側から前立腺を触診し、前立腺の硬さやしこりの有無などを確認します。
・超音波検査
直腸から細い超音波プローブを挿入し、前立腺の大きさや形を画像で確認します。また、前立腺生検を行う際に、針を進める位置を確認するためにも用いられます。
・MRI検査
前立腺内にがんが疑われる病変があるか、その位置や広がりを詳しく確認するために行います。検査結果は、生検の必要性や生検部位を検討する際の参考になります。

確定診断

・前立腺生検
前立腺生検は、前立腺がんの有無を確認するために行う検査です。超音波画像などで前立腺を確認しながら細い針で組織を採取し、顕微鏡で調べます。生検の方法や採取する部位は、PSA値、直腸診、MRI検査などの結果をもとに検討されます。

病期(ステージ)診断

前立腺がんと診断された後は、必要に応じてCT検査、MRI検査、骨シンチグラフィーなどを行い、がんの広がりや転移の有無を確認します。その結果をもとに病期(ステージ)を判定し、治療方針を決定します。

※PSA検査やグリソンスコア、TNM分類など、前立腺がんの診断についてさらに詳しい情報を希望される方は、ブラキサポートの「前立腺がん診断(PSA、グリソンスコアなど)」をご覧ください。

3.前立腺がんの主な治療法とは
「手術療法・放射線療法(外照射療法/小線源療法)・ホルモン療法・監視療法」

前立腺がんには複数の治療選択肢があり、病期(ステージ)、PSA値、がんの悪性度、年齢、健康状態、患者さん自身の希望などを考慮して治療法を検討します。治療法にはそれぞれ特徴があるため、主治医と十分に相談しながら、自分に合った治療を選択することが大切です。

図3:主な治療法の比較

治療法 主な対象 特徴 治療形態の目安
手術療法 主に限局性前立腺がん、一部の局所進行性前立腺がん 前立腺を摘出する治療 入院
放射線治療:外照射療法 限局性前立腺がん・局所進行性前立腺がん 体の外から放射線を照射する治療 複数回の通院
放射線治療:小線源療法 主に限局性前立腺がん 放射線を出す線源を前立腺内に留置して治療する方法 比較的短期間の入院
ホルモン療法 高リスク例、局所進行例、転移例など 男性ホルモンの働きを抑える治療 外来通院
監視療法 一部の低リスク前立腺がん 定期的な検査でがんの状態を確認する方法 定期受診

※治療期間や入院期間、通院回数は病状や治療内容、医療機関によって異なります。複数の治療が組み合わせて行われることもあります。

4.各治療法の特徴を理解する

3章では、前立腺がんの主な治療法の概要を紹介しました。ここでは、治療を選択する際の参考になるよう、各治療法の特徴や注意点をもう少し詳しく紹介します。


手術療法

手術療法は、前立腺と精のうを摘出する治療です。病状によっては、周囲のリンパ節をあわせて切除する場合もあります。手術方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術などがあり、医療機関や病状によって選択されます。摘出した組織を詳しく調べられる一方で、尿もれや勃起機能への影響がみられることがあります。


放射線治療:外照射療法

外照射療法は、体の外から前立腺に放射線を照射する治療です。強度変調放射線治療(IMRT)や粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)など、さまざまな方法があります。多くの場合、複数回に分けて通院で治療を行います。治療中や治療後に、頻尿、排尿時痛、排便時の違和感、出血などがみられることがあります。


放射線治療:小線源療法

小線源療法は、放射線を出す小さな線源を前立腺内に留置し、前立腺の内側から放射線を照射する治療です。主に限局性前立腺がんに対して行われ、病状によっては外照射療法やホルモン療法と組み合わせることがあります。前立腺内から放射線を照射するため、前立腺へ集中的に放射線を届けることができます。周囲の正常組織への影響を抑えやすいことや、比較的短期間の入院で治療を行うことがある点も特徴です。治療後には、頻尿や排尿困難などの排尿症状がみられることがありますが、多くは時間の経過とともに改善していきます。

小線源療法を受けられる医療機関一覧(シード研究会提供資料:PDF)

ホルモン療法

ホルモン療法は、前立腺がんの増殖に関わる男性ホルモンの働きを抑えることで、がんの進行を抑える治療です。単独で行われる場合のほか、放射線療法と組み合わせて行われることもあります。治療中には、ほてり、発汗、性機能への影響、骨密度の低下、筋力低下などがみられることがあります。


監視療法

監視療法は、がんの進行リスクが低い場合に、すぐに手術や放射線治療を行わず、PSA検査、画像検査、前立腺生検などを定期的に行いながら経過を確認する方法です。がんの進行が疑われる場合には、治療開始を検討します。

5.前立腺がんの治療費について知っておきたいこと

これまで紹介してきたように、転移のない前立腺がんでは手術療法や放射線療法(外照射療法/小線源療法)、転移のある場合にはホルモン療法などが治療の中心となります。治療内容や入院の有無によっては、医療費の自己負担が高額になることがあります。そのような場合に知っておきたい公的制度が「高額療養費制度」です。高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った1か月の医療費が、年齢や所得に応じて定められた自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が支給される制度です。対象となるのは、原則として公的医療保険が適用される診療にかかる自己負担分です。

公表されている制度見直しの情報では、令和8年8月診療分から、月額の自己負担限度額の見直しに加え、8月から翌年7月までの1年間を対象とする「年間上限」が設けられることが示されています。以下に「高額療養費制度」を利用する際の留意点をご紹介します。


高額療養費制度を利用する際の留意点*3,*4

1)公的医療保険が適用されない費用は対象外
公的医療保険が適用されない費用は、高額療養費制度の対象外です。例えば、先進医療の技術料、入院中の差額ベッド代、食事代の一部、日用品、交通費などは、原則として自己負担となります。なお、先進医療であっても、通常の診察・検査・入院など保険診療にあたる部分は、対象となる場合があります。
2)自己負担額の集計は、毎月1日から月末
例えば、同じ15日間の治療でも、月内に収まる場合と、月がまたがる場合では、自己負担額に差が生じます。
3)民間の医療保険とは別制度
高額療養費制度は公的医療保険の制度であり、民間の医療保険とは別の制度です。民間医療保険から給付を受けられるかどうかは、加入している保険の契約内容によって異なります。
4)長期療養では自己負担額が軽減される場合あり
直近12か月の間に高額療養費に該当した月が3か月以上ある場合、4か月目以降は自己負担限度額がさらに軽減される「多数回該当」という仕組みがあります。
5)「年間上限」により医療費負担が軽減される場合あり
公表されている制度見直しの情報では、令和8年8月診療分から、8月から翌年7月までの1年間を対象とする「年間上限」が設けられることが示されています。月ごとの自己負担額が積み上がり、年間の上限額を超えた場合には、超えた分について一旦窓口で負担したうえで、保険者から償還払いにより支給される場合があります。
6)制度を活用するにはマイナ保険証が便利
マイナ保険証を利用し、オンライン資格確認に対応している医療機関等で限度額情報の提供に同意すると、原則として窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。マイナ保険証を利用できない場合や、医療機関等がオンライン資格確認に対応していない場合などは、事前に加入している公的医療保険の保険者へ「限度額適用認定証」を申請し、医療機関の窓口で提示します。なお、住民税非課税世帯などで入院時の食事代の減額を受ける場合は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要となる場合があります。制度の詳細やご自身の所得区分、申請方法については、加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村国保などの保険者に確認しましょう。

【参考/出典】
*3 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
*4 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費」

本ページの高額療養費制度に関する記載は、2026年8月27日時点で公開されている公的機関等の情報をもとに作成しています。制度内容、自己負担限度額、申請方法等は変更される可能性があります。最新情報は、加入している公的医療保険の保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村国保など)または厚生労働省のWebサイト等でご確認ください。

なお、ご自身の医療費負担や制度利用についてご不明な点がある場合は、加入している公的医療保険の保険者や、受診されている医療機関の相談窓口にご相談ください。

6.専門医への治療相談、がんに関する相談について

前立腺がんは、ステージごとに様々な治療法があります。それぞれに特徴がありますので、どの治療法を選択するかは、患者さんご自身の希望や生活スタイルも踏まえながら、ご家族や医師とよく相談することが重要です。最も大切なのは、治療を受ける本人が納得することですから、納得のいく治療を開始するためのポイントをご紹介します。


聞きたいことをリストアップし、しっかり主治医と話し合う

医師との面談に臨む場合、事前に聞きたいことをリストアップしておくといいでしょう。以下の項目を参考に、自分が気になる点を書き出してみるなど、準備をすることは、冷静に病気と向き合うきっかけにもなります。

項目 確認したいこと
検査に関すること 検査結果の内容、そこからわかること
治療内容に関すること 治療の選択肢、それぞれの治療の特徴、治療の流れ
費用について 治療費、保険診療、高額療養費制度、自己負担額
副作用や合併症について どのような副作用や合併症があるのか、いつ頃、どの程度みられる可能性があるのか
生活への影響について 治療や治療後の検査にかかる時間、日常生活への影響、家族の協力が必要になる場面

セカンドオピニオンを受ける

セカンドオピニオンは、主治医のもとで治療を受けることを前提に、他の医師の意見を聞く仕組みです。前立腺がんには複数の治療選択肢があり、それぞれ特徴や副作用、生活への影響が異なります。主治医とよく話し合っても治療方針に迷う場合や、他の選択肢を確認したい場合には、セカンドオピニオンを活用しましょう。

セカンドオピニオンを受けることで、病気や治療への理解が深まり、納得して治療に臨む助けになります。一方で、予約や資料準備に時間がかかり、費用は自由診療となる場合が一般的です。希望する場合は、治療開始の時期に影響が出ないよう、早めに主治医へ相談しましょう。


「がん相談支援センター」を利用する

「がん相談支援センター」は、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する相談窓口です。がんについて詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが相談員として対応しており、治療、療養生活、仕事、医療費、家族への伝え方など、がんに関する様々なことについて相談できます。相談は誰でも無料で利用でき、匿名で相談することもできます。

治療方針そのものを決定する場所ではありませんが、相談内容に応じて、医療機関の探し方、セカンドオピニオンの受け方、地域の相談先などの情報を得られる場合があります。

前立腺がんの患者さん、ご家族の皆さまへ

ブラキサポートは、前立腺がんの検査、診断、治療に関する基礎情報や、小線源療法に関する情報を紹介する患者さん・ご家族向けの情報サイトです。

正しい情報を知ることは、主治医との対話や今後の治療選択を考えるうえで大切です。前立腺がんについての情報収集にお役立てください。